ASD
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自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)は、生まれつきの脳の働き方の違いによって、対人関係やコミュニケーション、こだわりの強さなどに特性が現れる発達障害のひとつです。「スペクトラム」とは、特性の現れ方に幅があるという意味で、人によって困りごとの内容や程度が異なります。そのため、以前は「自閉症」「アスペルガー症候群」などと分類されていましたが、現在はそれらを含めて「自閉スペクトラム症(ASD)」と呼ばれています。
ASDは「病気」ではなく、「脳の特性」です。他の人とは少し異なる感じ方や考え方を持つために、社会生活の中でストレスを感じやすくなったり、周囲とのコミュニケーションで誤解を受けてしまうことがあります。日本では、幼児期からの早期支援が活発に行われる地域が増えており、支援を受けたことで、自閉スペクトラム症の特性がありながらも、充実した社会生活を送っている方がたくさんいます。
一方、自閉スペクトラム症は、「特性から生じる問題」のほか、過剰なストレスや失敗体験が引き金となって「二次的な問題」が生じることも少なくありません。特性がごく弱い人でも、きちんと対応を受けないでいると、周囲の人との違いに悩んだり、誤解され孤立したりし、二次的な問題として身体症状(頭痛、腹痛、食欲不振、チックなど)、精神症状(不安、うつ、緊張、興奮しやすさなど)、不登校やひきこもり、暴言・暴力、自傷行為などに発展する可能性があります。
ASDの特性は、仕事や家庭などの社会的な役割が増え柔軟な対応や協調性が求められるようになった、大人になってから明確に困りごととして表れてきます。また、ASDの特性に気づかないまま過剰に頑張り続けた結果、うつ病・不安障害・適応障害などを併発してしまうことも少なくありません。このような“二次障害”がきっかけで受診し、ASDが背景にあることが分かるケースも多いのです。
以下のような特徴が見られることがあります。
苦手な状況などを確認し、今後どのように対処するか助言します。心理士とのカウンセリングでは、認知行動療法(考え方の悪い癖を直す)やロールプレイ(やりとりの練習など)を行うことがあります。
ASDの症状を軽減する薬(中枢神経刺激薬や非刺激薬)を使用することがあります。注意力の改善や衝動のコントロールを助け、日常生活を整えやすくします。副作用や効果を慎重に確認しながら、医師が個々に合わせて調整します。
気分の落ち込みなどが強く、仕事や学校に行くことが困難と思われる場合、診断書を発行し自宅療養を勧めることもあります。
当院では、安心してご相談いただけるよう、時間をかけて丁寧にお話を伺います。ASDの診断は短時間で判断できるものではなく、問診・心理検査・行動観察を総合的に評価して行います。
初診・カウンセリング
これまでの生育歴や職場・家庭での困りごとを詳しくお伺いします。
心理検査・質問紙
発達特性を客観的に把握するため、WAIS(知能検査)やAQ(自閉症スペクトラム指数)などの検査を行うことがあります。
総合評価・診断
医師が面談内容と検査結果を統合し、診断や今後のサポート方針を説明します。
支援・治療の開始
本人の特性や生活環境に合わせて、心理的支援や環境調整を行います。
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