認知症|鶴瀬メンタルクリニック|富士見市鶴瀬駅の精神科・心療内科

〒354-0024埼玉県富士見市鶴瀬東1丁目9−24

準備中

WEB予約 アクセス
鶴瀬メンタルクリニックのサブメインビジュアル

認知症

認知症|鶴瀬メンタルクリニック|富士見市鶴瀬駅の精神科・心療内科

認知症

認知症

認知症は、記憶力・判断力・理解力・計画実行力(遂行機能)などの「認知機能」が低下し、仕事や家事、金銭・服薬管理、移動など日常生活に支障が出てくる状態の総称です。加齢とともに増えますが、原因は一つではありません。多くは進行性ですが、なかには治療で改善が期待できるタイプ(可逆性の認知機能低下)もあります。早く気づき、適切な検査と生活面の工夫、薬物・非薬物療法を組み合わせることで、進行を緩やかにし、生活の質(QOL)を保つことができます。なお、認知機能が低下しつつあるものの、日常生活に支障がない段階を軽度認知障害(MCI)といいます。将来認知症へ進むリスクが高く、定期的な評価と生活習慣の見直しが重要です。

主な症状

自然な加齢でも「固有名詞が出にくい」「思い出すのに時間がかかる」ことはあります。一方、以下のような変化が積み重なると病的なもの忘れが疑われます。

記憶

  • 食事をしたこと自体を忘れる
  • 同じ質問を何度も繰り返す
  • 約束・支払いを忘れる

生活機能(遂行機能)

  • 薬・金銭・通帳の管理が難しい
  • 買い物の段取りが立たない
  • 公共交通機関の利用に支障

見当識

  • 日付・季節・場所がわからない
  • 慣れた道で迷う

言語・視空間

  • 言葉が出にくい
  • 料理や掃除の手順が乱れる
  • 物を見つけられない

性格・行動
(BPSD:行動・心理症状)

  • 疑い深さ、感情の起伏、意欲低下(アパシー)、不眠・昼夜逆転、易刺激性、幻覚

例:財布や鍵の置き場所を忘れるのは加齢でも起きますが、「財布の使い方・お金の管理そのものができない」は病的なサインです。

原因

認知症の主な原因は次のとおりです(頻度はおおよその目安)。

  • アルツハイマー病による認知症(約60%)
  • 脳血管障害による認知症(約20%)
  • レビー小体型認知症、前頭側頭変性症(FTD)など

可逆性の原因

慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏、薬剤性(抗コリン作用薬・一部の睡眠薬・抗不安薬など)、てんかん、睡眠時無呼吸症候群ほか

※せん妄(発熱・脱水・感染・薬剤・環境変化などを背景に起こる急性の意識変容)は認知症とは異なり、可逆的な原因検索と治療が優先です。

検査・診断

当院では、年齢相応の物忘れと病的な物忘れを見分けるために、段階的・多面的に評価します。

  1. 問診・スクリーニング

    生活歴・服薬歴・既往歴を丁寧に伺い、HDS-R、MMSE-Jなどの心理検査を実施します。家族同席での情報共有が診断精度を高めます。

  2. 身体診察・血液検査

    甲状腺機能、ビタミンB12/葉酸、電解質、腎肝機能、炎症、梅毒などを確認し、可逆性原因を見逃さないようにします。睡眠障害や難聴の確認も重要です。

  3. 画像検査(連携実施)

    必要に応じて連携医療機関で頭部MRIなどの画像検査を行い、脳萎縮や脳血管病変、慢性硬膜下血腫などを評価します。

急な悪化(せん妄が疑われる時):発熱・脱水・肺尿路感染・便秘・新規薬剤・飲酒などの誘因検索を優先し、早期対応します。

治療

治療は「非薬物療法を土台に、必要最小限の薬物療法を安全に組み合わせる」ことが基本です。病型や症状、全身状態、生活環境に合わせて個別化します。

非薬物療法(基盤)

運動
有酸素+筋力トレーニングの継続が、認知機能・気分・睡眠に良い影響を与えます。
生活リズム・睡眠衛生
規則正しい起床・光照射・日中活動量の確保、昼寝は短く。
社会参加・認知刺激
回想法、音楽・園芸・手工芸、役割のある活動。
難聴への対応
補聴器・耳鼻科連携は、認知機能低下の予防・BPSD軽減に有益です。
環境調整
メモ・定位置、転倒予防(段差・手すり・照明)、火気はIH化、見守り機器やGPSの活用。

薬物療法(必要時)

抗認知症薬
  • コリンエステラーゼ阻害薬:ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン
  • NMDA受容体拮抗薬:メマンチン(中等度~高度で使用)

いずれも少量から開始し、徐脈・胃腸症状・めまい・ふらつきなどの副作用を確認しながら調整します。

BPSD(不安・抑うつ・焦燥・幻視・睡眠障害など)

BPSD(不安・抑うつ・焦燥・幻視・睡眠障害など)には、まず原因調整(痛み・便秘・環境・昼夜逆転)を優先し、なお必要な場合に限って抗うつ薬・抗不安薬・抗精神病薬を慎重に使用します。転倒・せん妄・認知悪化など副作用のリスクがあるため最小限にとどめます。

原因疾患の治療・再発予防

脳血管性認知症
高血圧・糖尿病・脂質異常症・不整脈・喫煙・不活動の是正、抗血小板薬・抗凝固療法の適正化(必要時、循環器・脳神経内科と連携)。
可逆性原因
慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏、睡眠時無呼吸症候群、てんかんなどは各専門科と連携して治療します。

当院での対応/早期受診のすすめ

初期評価
まずは問診と簡易テスト、血液検査から。必要に応じて連携医療機関で画像検査を手配します。
薬物療法の方針
少量開始・ゆっくり調整を原則に、副作用を丁寧にチェックします。睡眠薬・抗不安薬は非薬物対策を優先し、短期・最小限に。レビー小体型が疑われる場合は薬剤選択に特に注意し、必要時に専門連携します。
介護・福祉との橋渡し
介護保険申請(主治医意見書作成に対応)、行政機関や訪問看護との連携を支援します。

早めの受診を勧めるサイン

  • 急な混乱・夜間せん妄、発熱・脱水後に急速な悪化
  • 幻視・妄想により自他の危険が懸念される行為
  • 転倒の増加、食事・服薬の維持が難しい
  • 金銭・契約・詐欺被害のリスクが高まっている

ご家族へのメッセージ

症状は「その人の性格」ではなく病気による変化です。叱責や訂正よりも、環境と声かけの工夫が役立ちます。

伝え方
短い文で一度に一つ、ゆっくり、選択肢を示す/否定より共感。
環境
メモ・定位置・写真ラベル、スケジュールの見える化、玄関・ガスの安全対策、IH・自動消火器、夜間照明。
見守り
服薬カレンダー、タイマー・自動水栓、GPS・ドアセンサーの活用。
介護者の休息
在宅サービスやショートステイの利用は「甘え」ではなく、治療の一部です。つらい時は遠慮なくご相談ください。

認知症は誰にでも起こりうる身近な病気ですが、原因はさまざまで対処法も異なります。早期に気づき、適切な検査と生活の工夫、必要最小限の薬物療法、介護資源の活用を組み合わせることで、できることはたくさんあります。「年齢のせいかな?」と感じたら、まずは簡単な認知機能テストから。私たちは医療と介護をつなぎ、ご本人とご家族が安心してその人らしく暮らせるように伴走します。

TOP