産後うつ
産後うつ

出産は、新しい命を迎える喜びとともに、女性の心と体に大きな変化をもたらす出来事です。産後はホルモンバランスの急な変化、睡眠不足、育児や家庭環境のストレスなどが重なり、心の調子を崩しやすくなります。この時期に気分の落ち込みや涙もろさ、強い不安、意欲の低下などが続く場合、「産後うつ(産後うつ病)」の可能性があります。産後うつは、単なる疲れや気の持ちようではなく、治療が必要なうつ病の一種です。日本では出産後の女性の約7%前後にみられると報告されています(日本精神神経学会・日本産婦人科学会ガイドライン2021)。出産後2〜3日頃に一時的な情緒の揺れがみられる「マタニティブルーズ」は、産後の女性の7〜8割に起こりますが、通常は1〜2週間で自然に回復します。一方で、2週間以上気分の落ち込みが続いたり、育児がつらく感じる場合は、産後うつが疑われます。早めに専門家へ相談することが大切です。
これらの症状が2週間以上続く場合や、生活に支障をきたす場合には、うつ病の可能性があります。
赤ちゃんの健やかな成長のためにも、母親自身の回復が何より大切です。
産後うつはさまざまな要因が重なって生じます。
出産後、女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)が急激に減少し、脳内の神経伝達物質に影響を与え、気分の変化を起こします。
夜間授乳や夜泣きによる慢性的な睡眠不足は、心身の疲労を蓄積させ、ストレスへの耐性を下げます。
初めての育児への不安、家事との両立、サポート不足、夫婦関係の変化など、周囲の環境要因も大きく関わります。
責任感が強く「完璧にやりたい」と思う方、また過去にうつ病を経験した方は、発症リスクが高いとされています。
これらはどれも「心が弱いから起こる」のではなく、誰にでも起こりうる生理的・心理的な反応です。
治療の目的は、心と体を休め、再び安心して育児や生活を送れるようにすることです。以下の3つの柱を中心に行います。
鶴瀬メンタルクリニックでは、産後の心の不調を「特別なこと」ではなく、自然な体と心の変化として受け止め、安心して相談できる環境づくりを心がけています。
初診時に、産後の体調や生活状況、育児への不安などを丁寧にお伺いします。
「涙もろくなった」「やる気が出ない」「赤ちゃんのことを可愛いと思えない」そんなときは、どうぞお気軽にご相談ください。少し立ち止まることで、回復への道がひらけます。
産後うつは、本人の努力不足や性格の問題ではありません。心と体が限界まで頑張ってきた結果として起こる「病気」です。ご家族にできることは、叱咤や励ましではなく、寄り添いと休息のサポートです。
母親が安心して休めることは、赤ちゃんにとっても最善の支援です。
産後うつは誰にでも起こりうる心の病気です。
「母親だから頑張らなければ」と無理を続けるよりも、「少しつらい」と感じた時点で相談することが、回復への第一歩です。あなたの心の不調に気づき、支え合う環境を整えることが、赤ちゃんにとっても大切なことです。一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。
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